1.金融ライセンスとは?トレーダーへのメリット

1-1.金融ライセンスとは?

 金融を管理する公的機関から与えられる、金融業を営む許可、認可を指します。
 「金融を管理する公的機関」は、日本でいうところの「金融庁」など国家によって管轄される「金融機能を安定させるための組織」が該当し、FX業者を含む各金融機関は取得したライセンスに応じたトレーダー保護を目的とした規定に従う必要があります
 金融ライセンスを取得することで「営業可能範囲の拡大」や「トレーダー目線での業者としての信頼性向上」が見込めるため、FX業者を含めた各金融機関はライセンスの制約に準ずるよう社内統制を行い、希望の公的機関に対しライセンス付与の申請を行います。

1-2.金融ライセンスによる金融機関への制約とトレーダーへのメリット

 発行機関によって設けている制約は異なりますが、大きく以下のような条項が存在します。
 金融ライセンスを取得することにより金融機関には各規定に従う義務が発生するため、いざという時に資産が守られるかの観点で、契約する業者が金融ライセンスを取得しているかどうかはとても重要です。

  ・出金拒否の禁止

 ほぼすべてのライセンスにおいて、顧客への出金拒否が禁止されています。ライセンスによってはシステム化されていない手動での出金手続きを禁止していたり、出金拒否に疑わしい行為があった時点でライセンスはく奪の審議対象となるものもあります。
 英国FCAのライセンスは出金拒否について非常に厳格なライセンスとして有名です。

  レバレッジ上限の設定
 金融商品に対して設定するレバレッジの上限を設けている機関もあります。例えば、日本金融庁であればFXで適用できる最大レバレッジは25倍までと規定しています。

信託保全、分別管理の徹底
 ライセンスにより、顧客資産を第三者管理の下で保管する信託保全、または運営費用とは別の口座で管理する分別管理を義務化しています。
 ※信託保全、分別管理については「3.顧客資産管理方法について」で説明しております。

2.海外FXにおける金融ライセンスについての事前知識

2-1.世界の主な金融ライセンス発行元機関

 海外FX業者が所有している主な金融ライセンスを、以下の表にまとめました。
 現在、下記2つの表のどちらのライセンスを取得するかが日本人向け営業の可否に大きく関わっています。(詳細は「2-2.日本人向け海外FX業者の金融ライセンス事情」を参照)

 ※一覧の詳細な内容は以降の本記事の趣旨とは関連ありませんので、参考情報としてご覧ください。

利用者からの信頼性、加入企業への厳格性で知られる発行機関(便宜上、下記機関で取得したライセンスを本記事内では「メジャーライセンス」と呼びます)

機関名 公式サイトURL
英国金融行為監督機構(FCA) https://www.fca.org.uk
キプロス証券取引委員会(CySEC) https://www.cysec.gov.cy/en-GB/home/
オーストラリア証券投資委員会(ASIC) https://asic.gov.au/
ニュージーランド金融市場庁(FMA) https://fma.govt.nz/

メジャーライセンスほど知名度はないが、多くの海外FX業者が取得しているライセンスの発行機関(便宜上、下記機関で取得したライセンスを本記事内では「マイナーライセンス」と呼びます)

機関名 公式サイトURL
セーシェル金融庁(FSA) https://www.fsaseychelles.sc/
セントビンセント・グラナディーン金融庁(FSA) http://svgfsa.com/
ケイマン諸島金融庁(CIMA) https://www.cima.ky/
バヌアツ金融サービス委員会(VFSC) https://www.vfsc.vu/

2-2.日本人向け海外FX業者の金融ライセンス事情

 ここまでの説明を踏まえて、以降では海外FX業者がどのようなライセンスを保有しているのかをご説明していこうと思いますが、その前に、海外FX業者全般に関する現状を記載しようと思います。

 我々日本人が利用する海外FX業者のライセンスには以下の特徴があります。
  ・日本金融庁のライセンスを取得していない
  ・信頼性が高いと言われている発行機関のライセンスを取得していない

2-2-1.海外FX業者が日本金融庁の許可を取得しないのはなぜか

 日本国内でFX商品の販売および勧誘を行うためには「金融商品取引法の登録」が必要となります。
 この登録を行った業者が順守すべき既定のうち、以下の2つが海外FX業者の参入の障壁になっています。
 レバレッジの制限
 法令のうちの一つ「金融商品取引業等に関する内閣府令」で規定されている証拠金率の下限が、2011年の改定により2%⇒4%(レバレッジに言い換えると25倍の上限)に変更されました。言い換えると、日本金融庁のライセンスを取得すると、設定できるレバレッジの上限が25倍となります
 ⇒レバレッジが25倍となっては本来のFXの魅力である「低資金でも大きなリターンを期待できる点」が損なわれてしまいます

 損失補填の禁止
 金融商品取引法では、顧客の損失を補填する行為を禁止しています。
 ⇒海外FX業者が売りとしている「ゼロカットシステム」を実現できなくなります。

2-2-2.日本人向け海外FX業者がマイナーライセンスのみを取得しているのはなぜか

 「4.海外FX業者の金融ライセンス一覧」で記載しておりますが、日本人が契約を行う海外FX業者は「2-1.世界の主な金融ライセンス発行元機関」で紹介しているマイナーライセンスのみを取得しているFX業者がほとんどです。メジャーライセンスを保持しているFX業者は見受けられません。

 「素性の知れない会社だからマイナーな国の許可しか得られない」というわけではなく(もちろん世の中にはそういった会社もあるとは思いますが)、これには日本の金融庁や金融商品取引法を背後に、複雑な事情があると言われています。

 例えば、メジャーライセンスの中でも基準がとても厳しいことで有名な「英国金融行為監督機構(FCA)」「キプロス証券取引委員会(CySEC)」といった機関があります。これらの機関のライセンスを取得するためには、日本の金融庁と同等以上の基準をクリアする必要があるといわれています。
本サイトで紹介するFX業者の多くは上記2つのライセンスのいずれかもしくは両方をもともと保有していました。

 が、日本の金融庁はこれらのライセンス発行機関に対し、「おたくのライセンスを持っている業者と日本人を契約させないでほしい」といった要請を行い、メジャーな金融ライセンスを保有する海外FX業者が日本国内の市場に参入できない状況を作ってしまいました
※その理由は明らかにされておりませんが、前述のレバレッジ観点などから、「メジャーライセンスを持つ海外FX業者の参入を許容してしまうと国内FX業者のトレーダー数が減る」と判断したうえでの「国内FX業者の保護」を目的としたものと推測できます。

 この対応に反応する形で、海外FX各社は「日本市場向けに子会社を立ち上げ」、「日本の金融庁から上記要請のかかっていない公的機関からのライセンスを取得」することで、日本人顧客の獲得を実現しています。
※以下のイメージを参照

海外FX業者の日本人トレーダー獲得に向けた対応

最もメジャーなXMを例にすると、以下のように、日本向けの子会社を明確に分けることで、日本のマーケットに参入することを可能としているわけです。

Trading Point Holdings Ltd (本体)
Trading Point of Financial Instruments UK ltd(欧州向け)
Tradexfin Limited (日本向け)

 以上を踏まえ、海外FX業者のライセンスを確認する際は、下記2点をあらかじめご認識いただければと思います。

海外FX業者のライセンス確認時のポイント
  • FX業者の信頼性を測るためには、契約会社単体ではなくグループ全体でどのようなライセンスを取得しているかが重要です。
     ⇒同一グループ内でキプロスやイギリスのライセンスを取得していれば、少なくとも悪質な行為(理由不明な出金拒否など)の被害に遭うことはないと考えてよいと思います。

  • 契約する会社単体では審査の厳しいライセンスを保有しているわけではないため、信託保全等の規約は事前に注意して確認する必要があります。
     ⇒他サイトでは上記グループ会社の理解をせずに「キプロスだから信託保全も安心」、「イギリスだから大丈夫」と記載していることが多いですが、いずれも理解と調査が不足しており、正しい解釈ではありません。鵜呑みにすると危険です。

3.顧客資産管理方法について

 本項では各金融ライセンスでも規定されている「顧客資産管理方法」について解説します。
 顧客資産管理方法については大きく「信託保全」「分別管理」の2種類が存在します。
※以下説明はあくまで一般的に使用される定義の解説であり、世界共通の決まりがあるわけではありません。そのため、FX業者によっては異なる解釈をしている可能性があり、必ずしも説明通りの運用がなされているとは限らない点を予めご了承ください。トレーダー資産の保管方法についてはほとんどのFX業者HPで公表されており、個別問い合わせで詳細を確認することも可能です。

3-1.信託保全とは

 トレーダーから預かる資産を、信託業を営む第三者の金融機関で管理することを指します。
 これによりFX業者はいかなる場合もトレーダー資産を自社の運営またはその他目的の資金として利用することはできません。したがって、仮にFX業者が倒産した場合であっても、トレーダーの資産は全額保護されます(※以下イメージ参照)
 また、FX業者によっては未確定損益を含めて信託保全を行っているケースもあります。

信託保全を採用するFX業者におけるトレーダー資産の運用
3-2.分別管理とは

 トレーダーから預かる資産を、自社の運営資金とは異なる口座で管理することを指します。
 信託保全との違いは以下となります。
  ・信託保全が第三者管理であるのに対し、分別管理はあくまでFX業者がトレーダーの資金を管理する
 ・FX業者が倒産した場合、信託保全は全額保証されるのに対し、分別管理はトレーダーの資金も差し押さえ対象となる可能性がある(返還の保証がない)点
 ただし、分別管理のみを採用しているFX業者であっても、損害保険に加入することで倒産時の顧客への資金返還を保証しているケースもあります。

海外FX業者の顧客資産管理を確認する際のポイント
  • 「信託保全」を採用している業者は有事の際の資金返還について心配する必要はないと考えられます。

  • 「分別管理」は信託保全よりも信頼性は劣ります。ただし、「業者の所在地域に契約可能な信託銀行がない」などの事情で信託保全を採用できないといった場合もあるため、一概に分別管理を行うFX業者が信用できないとも言い切れません。事前にインターネットなどで該当業者の出金拒否事例などがないかを確認することでリスクを軽減できると考えます。

4.海外FX業者の金融ライセンス一覧

 ここまで海外FX業者に関する金融ライセンスおよび信託保全の説明をしてきましたが、本サイトで紹介する海外FX業者のライセンス保有状況、信託保全/分別管理の規定を以下にまとめました。

 ※太字のライセンスは「2-1.世界の主な金融ライセンス発行元機関」で説明したメジャーライセンスを指します。

FX業者 契約会社 保有ライセンス グループ内ライセンス 顧客資産管理規定
XM Trading Tradexfin Ltd.

セイシェル金融庁(FSA)
FSC(モーリシャス金融サービス委員会)

キプロス証券取引委員会(CySEC)
英国金融行為監督機構(FCA)
オーストラリア証券投資委員会(ASIC)
・ 分別管理
※問い合わせの結果、銀行名、
補償については企業規定により回答なし
※(参考)分社前のポリシーは以下
・分別管理(英国バークレイ銀行)
・賠償保険加入(破綻した際は$1000,000まで補償)
TitanFX TI Securities Ltd. バヌアツ金融サービス委員会(VFSC) ニュージーランド金融市場庁(FMA) ・全額 信託保全 (濠NAB銀行)
FXGT 360 Degrees Markets Ltd. セイシェル金融庁(FSA)  分別管理
※問い合わせの結果、銀行名、
補償については企業規定により回答なし
FBS Mitsui Markets Ltd. ベリーズ国際金融サービス委員会
(IFSC)
キプロス証券取引委員会(CySEC)  分別管理
※問い合わせの結果、銀行名、
補償については企業規定により回答なし
LAND FX Landprime Ltd. セントビンセント・グレナディーン
金融監督庁(SVGFSA)
英国金融行為監督機構(FCA)
ニュージーランド金融市場庁(FMA)
 分別管理 (米Bank Of America
銀行)
Tradeview Tradeview Ltd. ケイマン諸島金融庁(CIMA)  分別管理 (サンタンデール銀行)
・賠償保険加入(破綻した際は$35,000まで補償)
HotForex HF Markets (SV) Ltd. セントビンセント・グレナディーン
金融監督庁(SVGFSA)
キプロス証券取引委員会(CySEC)
南アフリカ金融サービス委員会(FSB)
 分別管理
・賠償保険加入(破綻した際は€500,000まで補償)
表からわかること
  • 本サイトで紹介しているすべてのFX業者が金融ライセンスを保有しています(無認可業者ではない)
  • TradeView、FXGTを除くすべてのFX業者は、同一グループ内に厳格な金融ライセンスを保有しているFX業者が存在しています
  • すべてのFX業者が信託保全または分別管理を実施しています
  • TitanFXは信託保全の実施を公表しています
  • 分別管理を実施しているFX業者のうち、TradeView、HotForexは損害保険に加入しており、FX業者の支払い能力が失われた場合、上限付きの補償を受けることができます

5.本記事のまとめ

  • 海外FX業者は日本金融庁のライセンスを取得していませんが、取得するメリットが低いためであり、一概に危険な業者と判断する必要はありません。多くの海外FX業者は日本以外の金融ライセンスを取得することで信用面を担保しています。

  • 海外FX業者のライセンスを確認する際は、運営会社単体ではなくグループ全体としてどのようなライセンスを取得しているかも重要なポイントです。ただし、仮にグループで金融ライセンスを持っているとしても、運営会社自身が未認可の場合は利用を避けるのが無難です。

  • 本記事で紹介しているFX業者はいずれの運営会社も金融ライセンスを保有しており、グループ内でメジャーライセンスを取得しているFX業者が多いため、信用の面でのリスクは低いと考えてよいと思われます。いずれのFX業者も一方的な出金拒否などの事例は見受けられず、 信託保全は恐慌などの有事には業者選定のポイントとなり得ますが、ご紹介しているFX業者は平時での運用においてはそれほど意識しなくてもよいと考えます

  • ライセンスの観点のみでFX業者を選定するのであれば、「信託保全のTitanFX」、「損害保険に加入しているTradeView、HotForex」あたりが候補となるのではないでしょうか。

 本サイトでは、レバレッジ、入金ボーナスなど他の基準でもFX業者の比較を実施してまいりますので、関連記事も併せてご覧ください。

ここまでお読みいただきありがとうございました。

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